最終話『釜山で愛を抱きしめて』 最終話僕は彼女を愛しながら彼女が僕の腕の中で蘇生していくのを肌で感じていた。 まるでしおれかけていた花が水を吸って元気になるように揺は僕に抱かれいつもの揺に蘇った。 むしろ今までの揺よりもたくましくなったかもしれない。 「私・・・結婚したい」彼女が僕の腕の中で言った言葉は大きい声ではなかったがしっかりした口調だった。 何故こんな時にそんな意地悪を言いたくなったのか。わかりきったことなのに。 僕は「誰と?」と問い返す。 そして「もう・・・意地悪ね。貴方しかいないじゃない。」と悔しそうに答える彼女を抱きしめた。 そして「ああ・・結婚しよう」と答え彼女のおでこに神聖なキスをした。 あ・・しまった。僕が思った瞬間、揺は「誰と?」と意地悪そうに聞き返してきた。 これだから彼女のことが好きで好きで楽しくて仕方がないのだ。 僕は「君と」と答えたあと「誰と?」と意地悪く聞いた口をゆっくりと塞ぎ彼女のすべてを愛することにした。 彼女は僕の魂の片割れ。生まれ変わっても必ず探し出す自信が僕にはあった。 その時僕はインウになったとき感じた想いを現実に体感していた。 いや、それよりももっと自然でもっと温かく気づくというより導かれるような感覚に近かったように思う。 「生まれ変わってもきっと君を見つけられる」 僕はインウを意識することなくそうつぶやいた。それが正直な気持ちだったから。 揺から帰ってきた答えは意外だった。でも・・彼女らしい。 そんな彼女だからきっと僕は生まれ変わっても彼女を見つけられるんだろう。 僕は彼女に愛されながら包まれながらそんな幸せに浸っていた。 明け方ホテルに戻った僕たちはルームサービスで朝食をとった。 「う~~ん、やっぱりカリカリベーコンとクロワッサンよね。」 揺はカフェオレを飲みながら嬉しそうにそう言った。 「僕は朝飯はご飯とチゲがいいな」ささやかな抵抗をしてみる。 「そんなの・・・知ってる。たまにはパンもいいなぁ~ってことよ。朝からしっかり食べて一生懸命働いてもらわないとね。」 揺は笑いながらそういうとクロワッサンにバターを塗って僕に差し出した。 「これじゃ、いくつ食べても足りないでしょ」 僕は彼女がバターを塗ってくれたクロワッサンを受け取り彼女のサニーサイドエッグの片割れをもらった。 確かにたまにはこんな朝もいい。 顎に垂らした黄身を彼女にナプキンで拭いてもらいながら僕は彼女のいる毎日に想いを馳せた。 「またすぐに会えるわ。きっと」 お昼の飛行機で帰ると言う揺は部屋を出る時にそういった。 それは僕に言っているのか自分に言い聞かせているのかわからない調子だった。 「すぐっていつ?」 僕は急に彼女を手放すのが惜しくなってそんな子供じみた質問をした。 そして答えようとする彼女の口を自分の口で塞ぐ。 彼女を必死で引きとめようとするかのように深く熱いキスを繰り返す。 揺は僕の愛に答えながら僕の背中に文字を書いた。 「?何?」 唇を離し問いかける僕に 「とりあえず今夜夢の中でね。」彼女はそう答え優しく微笑んだ。 |